 カワサキ KDX200SR (90年式) 一年半を掛けた日本一周、50000kmの旅を始め、日本中を10万キロ近く走ったオートバイ。 2ストロークのオフロードバイクとしては、驚異的な走行距離ではないだろうか。もちろんエンジンの オーバーホールは4、5度行っている。 旅をするバイクとして2ストのバイクは、はっきり言って不向きである。燃費が悪く、エンジンの耐久性も低く、 2ストオイルを携行しなければならない不便さがある。それに環境にも悪い(当時は一般的に知られていなかった)。 それでも大好きなバイクだったから、長年乗り続けた。二人乗りで野宿道具を満載して、北海道三ヶ月半の旅もしたが、 リアサスペンションのシャフトベアリングが破壊してしまった。もっとも、気づかずに旅を終えたのだが。 90年代初頭、KDXは一大ブームで、道路を走っていればそこらじゅうで見ることができた。 また、当時北海道を旅するライダーの八割がオフロードバイク使用だったので、キャンプ場では必ず見た。 ただし、ほとんど全てのバイクがカワサキカラーのライムグリーンである。ブルーの車体はかなりマイナーだった。 乗り心地は4スト的で、旅で使っていても疲れなかった。長距離走り続けると尻が痛くなるのはオフ車の宿命だが、 すぐにバイクを止めて歩いたり写真を撮ったりする旅の仕方だったので、あまり気にはならなかった。 ちなみに、写真左は日本一周の装備。右は北海道二ヶ月。一週間を超えれば、装備の差はほとんどなくなる。
 ヤマハ TENERE600 ニュージーランド3ヶ月の旅でレンタルしたバイク。北島、南島のほぼ全域、一万キロを二人乗りで走った。 600ccのバイクだけあって、100km/h巡航(NZでの制限速度)も性能的には楽だったが、風防の無いバイクは 風当たりが強く、一日何時間も走るとけっこう疲れた。 このバイク最大の欠点は、タンク形状だ。30リットルのビッグタンクが標準装備されているが、シート付近が 絞りすぎてあって、シートの幅よりも狭いくらいで、ニーグリップが全くできない。 それでも二人乗りフルパッキングの状態で砂利ダートを100km/h以上で突っ走れたのだから、 サスペンションや車体の性能は悪くなかったのだろう。 結局、旅の最後のほうではかなり気に入って乗っていた。金に余裕があったら自分のものにして、日本に 送りたかったくらいだ。極端にオフロード性能に偏っていない、バイクらしいバイクだった。
 カワサキ KLX650 (93年式) 現在乗っているバイク。僕の旅のスタイルには、ほぼ理想のバイクと言える。 走行距離4200km時、個人売買の中古で購入。社外品のマフラーがついており、加速の感じは良かったが、 音がうるさいし、頻繁な緩衝材(グラスウール)の交換が面倒なので、メーカー純正に戻した。 250ccクラスのオフ車と違い、エンジン性能に余裕を持たせて作ってあるので、乗り心地がいい。 マイクロロン処理*1をしてあるせいもあるが、エンジンは滑らかに気持ちよく回る。たとえ100km/hからの 加速でもアクセル一つで瞬時に可能で、追い越しは非常に楽である。そうなると気持ちにもゆとりが生まれ、 かえって安全運転ができるようになる。 車体の作りこみも良い。二人乗りフルパッキングでヘアピンのコーナーを走っても、フレームのよじれは 全く感じられない。メーター周りやスイッチ類、バックミラーに至るまで、250ccクラスのオフバイクとは別格。 エンジン周りもとても良い仕上げ。「カワサキだから…」*2という言葉があるが、そういう感じは全くない。 リアサスペンションにガスリザーブタンクがなく、たったの五段階調整しかできないが、実際に走ってみると 不満はなくなる。高速林道、ガレ道、獣道等、ダートでも腕前があれば250cc並みに走れる。 かなりの希少種なので、KLX650という存在を知らないバイク乗りからは、必ずと言うほど250ccに間違われる。 実際、車体の大きさは250ccとあまり変わらない。「言われてみれば大きい」とは、よく聞く感想である。 僕としてはオフロード用タイヤが見た目もカッコイイし、ダート性能も格段に優れるので好きなのだが、 強烈なトルクによってすぐに減ってしまうし、旅で圧倒的に走る距離の長い舗装路の乗り心地が悪いので、 一番オンロード寄りのタイヤを現在は履いている。それでも乾いたダートならば、かなり荒れていても問題ない。 *1 エンジントリートメント剤。通常の添加剤と違い、一度添加して処理をすると数万キロ効果が持続するという。 実質的な効果としては、機械の摩擦と磨耗を減らして、エンジンの高寿命化、エンジンの保護、振動軽減、燃費向上、 圧縮力向上などが上げられる。高額だが、効果が実感できる商品である。 *2 カワサキのバイク乗りたちが、自虐の中にも愛着を見せて言う言葉。「造りがいい加減でも仕方がない」と続く。 しかし、それだからといって信頼性に劣る製品ではないところが不思議である。
バイクの選び方 総論。 自分の気に入っているバイクならば、どんなバイクで旅をしてもいい。ただし野宿旅をする場合、 どこにでも行ける、と感じられるオフロードバイク(トレール車)のほうが有利なのは間違いない。 旅の道具としてバイクがいいのは、完全に機械から超越して、「相棒」として感じられるところだ。 長く乗り続けているうちに、バイクは乗り手の個性が強く反映されてくる。同じ車種でも、乗り心地が全く 変わってくるのだ。それは「バイクの個性」と考えていいだろう。機械を擬人化して考えるのは滑稽だと 思う人もいるだろうが、バイクを単なる機械だと考えて接しているバイク乗りはむしろ少数派であろう。 とにかく、バイクでの旅は他のどんな乗り物にもない感動がある。確かに、ただ走るのならば自転車のほうが 面白い。僕はバイクに乗る前、自転車で旅をしていた。だがもう、自転車で旅をする気にはなれない。 体力を使うとか、距離が伸びないという理由ではない。バイクの存在が、それだけ魅力的なのだ。 「自由な旅」を考えた場合、バイク以上の乗り物は存在しない。自由と便利は別物である。また、不自由と不便も 別のものである。 気の向くまま、風の吹くまま。そんな旅が自由自在にできるのは、バイクという相棒がいるからなのである。  『SASURAIらいふ』旅の道具 『SASURAIらいふ』ホーム |